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 ハープやリラは非常に古い歴史を持つ楽器です。 神話や歴史の中には、これらの楽器に関するエピソードが数多くみられます。 これらの楽器は何か不思議な力を持つ神秘的な楽器として描写されることが多く、そのような不思議な力には、今日の音楽療法的活動やセラピーなどにおいて楽器や音楽が持ちうる力に通じるものがあります。 また、描写されている内容は、客観的事実とは言えないとしても、何らかの真実を伝えているものと考えられ、このようなエピソードが、今日の私たちが抱くハープやリラのイメージに多かれ少なかれ影響を及ぼしていることも否定できません。 そこで、ハープとリラにまつわる神話や歴史のエピソードをいくつか紹介し、その中でこれらの楽器がどのように描写されているのかをみていきたいと思います。

 リラがギリシア神話におけるアポロンApolloの楽器であるということは、比較的多くの人々に共通したイメージであるようです。ゼウスZeusの息子であるアポロンは、音楽の神であると同時に医療・弓術・信託の神でもあり、精力的かつ優美で穏やかな青年でした。 彼は優れたリラ奏者であり、アウロス(笛)奏者であるマルシュアスMarsyasとの間でおこなわれた音楽競技では、彼のリラが勝利を収めたと言われています。 リラは、アポロン的な面を象徴し、賢明なる節制、調和のとれた節度、精神的な均衡などを表現していたためギリシアの教育制度においては、法や秩序に対する感覚と節度を守る能力を子どもたちに養うのにふさわしい楽器として、盛んに用いられていました。

 アポロンと並び、ギリシア神話においてリラと深く結び付けられているのは、彼からリラを譲り受けたと言われるオルフェウスOrpheusです。 オルフェウスはトラキアの王アイオグロスOeagrsuと芸術の女神カリオペCalliopeの息子であり(彼の父親をアポロンとする説もある)、歌においてもリラの演奏においても卓越した音楽家であったようです。 彼の演奏は、人や動物だけでなく、石や木をも魅了し、また、罪を清め、病いを治し、神の怒りを和らげると評判でした。 彼は、蛇に噛まれて死んでしまった妻のエウリュディケEuryudeiceを連れ戻すために冥界へと向かいましたが、その際、冥界を司る神ハデスHadesの心を動かしたのも、その美しい歌声とリラの演奏でした。 もっとも、ハデスとの約束を破り、地上に戻る途中で後ろを振り返ってしまったオルフェウスは、永遠にエウリュディケを失うことになってしまいます。 そのため、オルフェウスは深い悲しみのあまり他人との接触を避けるようになり、最後は嫉妬と憎しみに狂ったトラキアの女たちに八つ裂きにされてしまいます。 その後、彼の首とリラはペプロス川を通ってレスボス島へと流れつき、首は島の住人によって埋葬されました。また、彼のリラは女神によって天上に引き上げられ、星座(琴座)になったと言われています。

 アポロンやオルフェウスの話ほど有名でないにしろ、ギリシア神話の中にはこの他にもリラにまつわるエピソードが見られます。 アポロンと同じくゼウスの息子であったアンフィオンAmphionは、リラの音で石を動かし、テバイの城壁と塔を建てたと伝えられています。 また、アキレスAchillesやヘラクレスHeraclesは、リラを演奏することによって、穏やかで上品な性格になるよう訓練されていました。

 このように、神話において重要な役割を担っているリラですが、その起源については、さまざまな説が存在します。 最も一般的なのはヘルメスHermesが亀の甲羅からリラを造ったとされているものですが、細かい部分の描写は実にさまざまで、アポロンの牛を盗みにいった折に途中で拾った亀の甲羅に牛の皮を被せ、十七本の弦(弦の数については、六本、七本、九本など、他にも様々な説がある)を張ってできたのが始まりだとするもの、途中で出会った亀を殺して造ったのだとするもの、二本の山羊の角を腕木にし、羊の腸から弦を造ったとするもの、あるいは最初の弦は三本で、高音は夏から、低音は冬から、そして中間の音は春から採られていたとするものなどがあります。

 ギリシアの数学者であり哲学者であったピタゴラスPythagorasも、リラと関連の深い人物の一人でした。 彼は弦楽器の中でも特にリラを好み、リラの七本の弦を一つ一つの天体に対応させていました。 リラの本体は人間の体を、弦は神経を、そして音楽は精神を表すとし、神経である弦を奏でることによって精神に調和がもたらされると考えていました。 ピタゴラスの思想を受け継いだピタゴラス派の人々は、朝は自分自身を敏活にするため、そして夜はその日の心配事を取り去り、予言的な夢を見る準備を整えるために、リラの演奏をしたのです。 また、ピタゴラス派の一員であったクレイニアスKleiniasは、怒りを抑え、自分自身の心を清め静めるためにリラを弾きました。

 ハープにまつわる伝説はアイルランドにも伝えられています。 それは、偉大な神であると称えられていたダグダDagdaが、いかにして敵に囚われていたハープ奏者を救い出したかを物語ったものです。 それによれば、ダグダが命令すると、壁にかけられていたハープがひとりでに鉤からはずれ、彼の元へと戻ってきました。 ダグダはその魔法のハープで三つの調べを奏で始めたのです。 最初の曲を演奏すると女たちは泣き出し、次の曲を演奏すると彼女たちは笑いころげ、最後の曲を演奏するとその場にいた者は皆眠ってしまいました。 また、この三つの調べが持つ性質を、ハープの三本の弦が持つ性質として語ったものもあります。 すなわち、ハープの三本の弦にはそれぞれ、悲しみ、笑い、そして眠りをもたらす力がありました。

 アイルランドをはじめ、ケルトに伝わる伝説の中には、ハープの持つ不思議な力によって勝利を収めることができた音楽家や英雄を題材としたものがしばしば見られます。 ウェールズの吟遊詩人タリエシンTaliesinが宮廷に囚われていたエルフを助け出した話もその一つで、彼が宮廷の前でハープに合わせて歌を歌い始めると、強い嵐が起こり、宮廷が揺れ始めました。 そのため、エルフを捕らえていた鎖が外れ、エルフは無事に宮廷から逃げ出すことができました。 また、巨人に囚われていた美しいハープ弾きの娘と、彼女を助けにきた騎士が、ハープの演奏で巨人を眠らせることによって勝利を収めたというスコットランドに伝わる伝説もあります。

 また、伝説の中には、しばしば死者の体から造られたハープが登場します。 スコットランドのバラッドである「二人の姉妹」は、姉に殺された妹の体から造られたハープ(その本体は彼女の骨から、弦は彼女の髪から、そしてチューニングのためのピンは彼女の指からできていた)が、姉の結婚式において姉の罪を告発するというものでした。 また、北欧には、恐ろしい女に殺されてしまったハープ奏者が、その体から造られたハープによって復讐を遂げるという話が伝えられています。 このように、死者の体から造られたハープには、しばしば死者の魂が宿ると思われていたようです。

 ハープは、また、絵画や彫刻の中でも天使とともに描かれることが多いため、しばしば神聖な楽器というイメージが持たれていますが、一方では、悪魔と結び付けられていることも多くあります。 たとえば、その昔、アイルランドのタラという場所に住んでいた悪魔は、ハープの甘美な旋律で人々を眠らせ、その間に町を破壊しようとしていました。 また、スコットランドにはハープを意味するクラルサッハという名前で知られる岩がありますが、その岩の上では悪魔がハープを弾いていたと言われています。 A.KinnairdとK.Sangerは、スコットランドにおけるハープの歴史について語ったその著書の中で、ハープは人々をうっとりさせる性質を持つ一方で、ぞっとさせるような一面も持つ、美しくも危険な楽器であると述べていますが、これは、ハープの持つ二重の性質をうまく言い表していると言えます。

 また、ハープはセイレーンあるいは人魚とも結び付いています。 これらはホメロスHomerの『オデュッセイア』を始め、さまざまな詩や物語に登場する怪物であり、海から妖しい歌声を響かせ、船乗りたちを死に誘います。 下半身は鳥あるいは魚ですが、上半身は美しい乙女で、誘惑的なイメージで語られることが多くあります。 これらの最大の武器はその歌声ですが、ハープを持ったセイレーンあるいは人魚を題材とした絵画や彫刻は数多く、ハープを見た時にセイレーンあるいは人魚を連想する人も少なくありません。

 「世界最古の書物」とされている聖書には、ハープ、太鼓、タンバリン、カスタネットなど様々な楽器が登場します。 一般的にハープは旧約聖書「サムエル記」「列王記」などに登場し、「詩篇」の作者でもあるダビデによって広がったとされています。 それはハープ奏者のダビデが、その演奏によって、悪霊に悩まされていたサウル王を救ったとするもので、音楽が療法的に使われた1つの例を表しています。 ダビデの竪琴(紀元前1000年)より更に3000年ほど遡った紀元前4000年紀、旧約聖書の創世記(神が天と地を創造した、とされる歴史のはじまり)には、「ユバル」という人物が登場し、「彼は立琴と笛を巧みに奏(そう)するすべての者の先祖となった(創世記4:21)」とあります。 聖書に初めて登場する楽器の記述は「ハープとフルート」が最初、そしてこのユバルという人物こそ、ハープとフルートの第一人者であると言えます。 以下は、ユバルの家系図です。


    【ユバルの家系図】 


  
レメクから生まれた3人の息子はいずれも技術者・芸術家・遊牧民といった社会的役割がそれぞれ与えられました。

トバル・カイン=鍛冶屋・金属加工技術者
ユバル=奏する者・演奏家・芸術家 he was the father of all who play the harp and flute. 4-21
ヤバル=羊を飼う者・遊牧民

創世記42022Study Bible(The New International Version)での解説は以下の通りです。

JabalJubalTsubal-Cain, Lamech’s three sons had similar names,
each derived from a Hebrew verb meaning
to bring, carry, lead,
and emphasizing a activity. Tubal-Cain’s name was especially appropriate,
since
Cain meansmetalsmith.”」


参考: 
聖書に書かれている「ハープ記述」はこちらをご覧ください
 

神話や歴史が生まれた地域や時代はさまざまですが、神話や歴史の中には、ハープやリラを題材としたものが数多く見られます。 ハープやリラの音は弾き手や聴き手の心に落ち着きや安らぎをあたえるものとして語られています。

・アポロンのリラ「調和」「均衡」
・オルフェウスのリラ「神の怒りを和らげる」
・アキレスやヘラクレス「穏やかで上品な性格になるための修練」
・ピタゴラス「精神に調和をもたらす」
・ピタゴラス派のクレイニアス「怒りを抑え、自分自身の心を静める」
・ハープ奏者のダビデ「悪霊を追い払う」
・スコットランドの伝説「巨人を眠らせた」
・アイルランドの悪魔「人々を眠らせた」

 このように、ハープやリラの音には人々に落ち着きや安らぎをもたらす効果があると考えられており同様のことは神話や歴史の中だけでなく、現代の音楽療法的活動においても報告されています。 また、このようなエピソードは、ハープやリラの音が持つ性質や、実際に人々にあたえた影響を何らかの形で反映したものだと考えられます。

 ハープやリラは神や悪魔といった人間以外のものと結び付けられていることも多くありました。 リラはギリシア神話のアポロン、つまり神の楽器でしたし、魔法のハープを奏でたアイルランドのダグダもまた神でした。 アイルランドやスコットランドでは悪魔がハープを弾いています。 絵画や彫刻においてハープはしばしば天使や人魚の楽器として描かれていますがこのような伝説や絵画は、ハープやリラが別世界と深く結び付いた楽器であることを物語っているのです。 また、妻を取り戻すために冥界でリラを奏でたオルフェウスの話や、死者の体から造られたハープにまつわるエピソードからも、ハープやリラが持つ別世界とのつながりを感じとることができるでしょう。

   
   
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